『からゆきさん』
『からゆきさん』森崎和江著
初めに書かれたのは、1976年だそうです。
私は、2016年に発刊された文庫版を読みました。
内容も衝撃的でしたが、なによりもここまで調べて書き上げた著者に感銘を受けました。
内容は、日本に帰って来られた「からゆきさん」本人やその養女からの話。
当時の新聞を読み、実際にその場所に行っての聞きとり。
泣いたり、怒ったり、憤ったり、切なく、むなしく、やり場のない思いで一気に読むことは出来ませんでした。
著者のあとがきに「日本を棄てたい思いでもだえました」と書かれており、共感しかありませんでした。
こんなにも日本人であることが恥ずかしく思うことはありませんでした。
「からゆきさん」に対してではありません。
「からゆきさん」を取り巻く周りの環境、大人たち、日本政府、新聞社、新聞を鵜呑みにする一般人に対して憤るのです。
私は、今まで奴隷制を始めたイギリスやフランスが許せなかった。未だに謝罪しない態度にも憤っていました。
どうしても、人が同じ人を奴隷にするのか理解できませんでした。良心の呵責はなかったのか、奴隷は人間だと思っていなかったのかと思うと、私は胸の中が沸騰するくらい憤っていました。
奴隷について調べるのが、ライフワークの様になっていて、本を読んだりネットで調べたりするのが習慣になっていました。過去に、日本人も奴隷にされていたことがあったことが分かったり、売っていたのは同じ日本人だと知って衝撃を受けました。その流れで、この『からゆきさん』を知りました。もちろん「からゆきさん」の存在は知っていました。ですが、ここまで詳細には知りませんでしたし、過去の話で正面から受け取ることもしていませんでした。
これは、昭和の初めころまであった話で大昔のことではない。絶対に忘れてはいけない事実だと思っています。
「からゆきさん」になった経緯は人それぞれです。口減らしのために親に売られたとか、貧しさゆえに自ら志願したとか、騙されて連れてこられたり、酷いのは誘拐されて連れて来られた少女も多くいたことです。
私は何か思い違いをしているのか?
日本は先進国で、文化的で、働き者で…
尊敬されるまでは、もちろん思ってないですが、人様に対して恥ずかしい行いはしていない民族であると思っていました。
ですが、当時の日本は同じアジア諸国から見ても、恥ずかしい存在であったようです。
「其無慈悲なこと恐らく世界一であらふ」とアメリカのジャーナリストに書かれている。
生まれた時代が悪かった、生まれる家が悪かったとは言えない。
辛い思いをして亡くなった方々が、天国で安らかに過ごされることをお祈りするしかありません。
ここまで調べ上げ、書き上げて下さった著者に感謝します。
多くの人に読んで、知ってもらいたい一冊です。
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