『地下鉄道』

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド 谷崎 由依訳 早川書房

ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞受賞

「アメリカ南部の農園で、苦しい生活を送る奴隷の少女コーラ。あるとき、仲間の少年に誘われて、意を決して逃亡を試みる。地下をひそかに走る鉄道に乗り、ひとに助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北をめざす――。世界的ベストセラーついに刊行!」早川書房WEBサイトより

文庫版を購入

19世紀のアメリカ南部が舞台となっており、アフリカからど奴隷として売られてきた黒人が、代々奴隷として農園で働かせられる。
娘も孫も…延々と奴隷のままで。
勝手に売られて、アメリカに連れてこられて、子どもも孫もず~っと奴隷のまま…
こんな地獄があっていいのだろうか…

このお話は、フィクションではあるものの、奴隷の歴史を土台に書かれているのだろう。
白人が奴隷に対する扱いや、拷問の仕方などは、恐らくそのままであろう。
南部から北部に逃れる「地下鉄道」は本当にあったのかどうかは、分からない。

奴隷だった少女コーラが、自由を求め北へと逃げ続ける。
何度も捕まりそうになりながら、途中での暮らしも決して楽ではなく、辛過ぎる逃亡生活を送る。
勇敢に戦うコーラに、力を受ける。
コーラを待っているのは、どんな未来なのか・・・

この本は、全米図書賞を受賞している。
多くのアメリカ人が読んだということだろう。
いつも思う疑問が、こういった話を白人はどのような気持ちで読んでいるのか?
この話を読んでも、黒人差別はなくならないのか?

アメリカ人は、「unfair」という言葉が嫌いだ。
これを言うとひどく怒る。
「justice」の国なのだ、アメリカは。
そうらしい・・・

世界の警察なんて言われた時代もあったよね。
過去の反省から、人権を大切にする国になったんだろうね。
それでも、人種差別はなくならないんだ。
根が深い問題だよね。

問題は、奴隷問題だけではない。
奴隷として生まれて育って、自由になったことがない。
職業、住居、何もかも、地主に与えられるまま生活をしてきたから、自由競争社会に放り込まれたら、生きる術が分からない。
教育を受ける機会を与えられていなかったから、自分たちがどうやって未来を築いていけばいいのか分からなかったはず。
今にいたるまでは、多くの苦難を乗り越えてきたんだろうと思う。
だから、もう人種差別は止めて、本当の自由を与えて欲しいと切に願う。

コーラのその後は、どんな生き方をしたのか知りたい。

『地下鉄道』

コルソン・ホワイトヘッド
谷崎 由依訳
早川書房
文庫版
1,109円(税込)


コメントは利用できません。

関連記事


文芸書


PAGE TOP