シブヤで目覚めて
『シブヤで目覚めて』 アンナ・ツィマ著 阿部賢一・須藤輝彦訳
チェコで日本文学を学ぶヤナは、謎の日本人作家の研究に夢中。一方その頃ヤナの「分身」は渋谷をさまよい歩いていて──。プラハと東京が重なり合う、新世代幻想ジャパネスク小説! -河出書房新社
こちら渋谷、こちら渋谷。
プラハ、聞こえますか?
プラハの大学で日本文学を専攻するヤナは、ゴスロリと忍者が闊歩する学部で
謎の作家・川下清丸の小説にのめりこんでいる。
そのとき渋谷では「分裂」した17歳のヤナが単語帳片手に幽霊となって街に閉じ込められていた。
鍵を握るのは謎の作家秘密とは?
日本文学フリークたちの恋と冒険の行方とは。
チェコ文学新人賞を総なめにした作家による、ふたつの町が重なりあう次世代ジャパネスク小説。
マグネジア・リテラ賞
イジー・オルデン賞受賞
—- 本の帯より
面白かった。よくこんなこと思いついたなと思う。
マジックリアリズム的な要素もありつつ、作中に語られる日本文学の話が丁寧に描写されている。
さて…「川下清丸」という作家は、存在していたのだろうか?
実在の菊池寛などとの交流の話があまりにリアルだし、あとがきでその詳細を書かれていたりしたので、てっきり実在するものだと思ったが…
訳者あとがきを読まなかったら、危うく信じてしまうほど巧妙だ。
それでも、実在すればいいのにと思ってしまう。
そして、「分裂」を読んでみたかった。
「川下清丸」はほんの少し太宰の香りがした。
作中の川下の作品「恋人」を読み進めていくことになり、どちらの話も気になりつつ、渋谷でのヤナにハラハラしつつ、プラハのヤナと友だちとの話もワクワクしながら、お話は進んでいく。
年代や地理も超えて、奥行きのある小説だと思った。
とても読みやすく、あ~そこで繋がったのか…と布石もしっかりと。やられた。おもしろかった。