死んでいない者

『死んでいない者』滝口悠生 文春文庫

第154回芥川賞受賞作。

ある秋の日、大往生を遂げた男の通夜に親戚たちが集まった。子、孫、ひ孫三十人あまり。縁者同士も一夜の何気ないふるまいが、死と生をめぐる一人一人の思考と記憶を呼び起こし、重なり合う生の断片の中から、永遠の時間が現出する。「傑作」と評された第154回芥川賞受賞作。

おじいちゃんのお通夜という特別な日。地域の人や親戚たちで、食事の準備や片付けなどでにぎわう中、子どもたちは、少し浮足立った気分になる。
今では、あんまり見られなくなったお通夜の様子。
昔は、近所の人が何もかも取り仕切ってくれて、別段することもなく手持無沙汰なんだけど、そこにはいないといけなくて、学校も休んでよくて、いとこたちが久しぶりに集まっているからか、ちょっと悪ぶったりと…
その当時のお通夜に出てくるお寿司のシャリの冷たさとか、ネタの乾き具合なんかも想像できる。
あ~昔はこんなだったな~と懐かしい気持ちになる。
しかし、この親戚たち(子どもたち)は、よく飲むな~
昔ってそんなだったかな…
時制は出てこないけど、テレサテンの「時の流れに身をまかせ」が出てくるので30年くらい前なのかな…
わたしは「別れの予感」の方が好きだったな。

全体に視点が定まっていないから、どこかふわふわと浮遊しているような、お通夜ということもあって、なんとなく余計に漂っている感覚がする。

これほどの人間が登場するのだけど、誰一人性格が悪くない。(多少、生き方に問題のある人間は数人出てくるが性格は悪くない)というのは珍しい感じがする。

特に盛り上がりがあるわけではなく、淡々と長い夜が流れていく。


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