『メイドの手帖』
『メイドの手帖』 Stephanie Land著 村井 理子訳 双葉社
2019年 オバマさん推薦図書 NETFLIX映像化決定
最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語
「シングルマザーの著者が子供を育てつつ最低賃金のメイド(清掃員)として働き、貧困、社会の偏見、DVを振るう元パートナーや経済的自立を阻む恋人、それら全てが低下させる自己肯定感に苛まれながらも作家になる夢と自らの解放を叶えていく様子を描いた自伝的作品。発売早々全米ベストセラーとなり、オバマ前大統領の2019年推薦図書にも選出。NETFLIXで映像化決定。」双葉社WEBサイトより
やはり、オバマさんの推薦図書に選ばれるとベストセラーになるよね。
オプラ・ウィンフリーさんのブッククラブとどっちが売れるんだろうか…
そんなことより… 先日読んだ『空芯手帳』との落差が激しく頭が混乱した。
子どもを持つことで、自由を勝ち取った人と、子どもを持つことで貧困に陥った人…
この作品は、小説ではなく自伝的作品とされている。
主人公の名前は、たしかに「ステファニー」だった。
日本では、アメリカの貧困は、黒人やヒスパニック系など移民の人たちというイメージがあるが、この方は白人だ。
白人でも、生まれた家が裕福ではなければ、それなりなのだ。
白人だからと言って、貧困には陥らないとは限らない。
日本でもそうだが、親の貧困が子供の貧困を招く。当たり前のことだが…
だが、彼女は諦めなかった。読んでいて、何度も泣きそうになったし、もうダメだと思う瞬間も何度もあったが、耐え続けた。
こんなにも一生懸命働いて、子育てをしているに関わらず、福祉を受けることを非難されるとは、アメリカってロクな国じゃないなと思ったりしたが、それは恐らくどこの国でも同じなんだろう。
自分たちが支払った税金で楽して食べていると思っているんだろうが、なぜそんな狭い心なんだといつも思わされる。自分たちの支払った税金で食べていけるなら、誇らしく思えばいいじゃないかと思う。
そんな内容を、オバマさんはどんな思いで読んだのだろうか? 政治家としてやり残したことがあると強く感じなかったのか?
また、なんて家族なんだ!と何度も感じるほど、家族に対しても悲しい気持ちになったが、現実はそんなもんなんだろう。
この作品は、貧困に陥る原因は一つではないことがよく分かる。
子どもが出来て、相手に望まれなかったことが一番の原因なのかもしれないが、それだけではない。
シングルマザーと子どもを取り巻く環境もそうだし、学歴もそう。職歴もそう。
考えさせられることが、たくさんある。
先進国の方が、周りは助けてくれないように思う。
孤立してしまうのだ。
それでも、ようやく夢に見ていたミズーラに引っ越し、モンタナ大学に進学し、ライティングプログラムを受けることができるようになる。
彼女の背中を押してくれた存在も大きいとは思うが、夢を夢で終わらせなかったステファニーは素晴らしい。
そして、『アルケミスト』が出てきて驚いた。
わたしも大好きなこの本。
「何を望んでも、宇宙全体が協力し、実現のために動いてくれる」
『アルケミスト』 byパウロ・コエーリョ
ミズーラでの暮らし、大学生活、本を執筆している期間…知りたいことが山ほどある。
この続きは、またきっと読むことが出来ると思っている。
彼女は、作家になりたかった。
今回は、自伝を書かれたが、小説を書く日がくるのだろうと思う(もう書いているのかも知れないが)きっと、そこからが作家としての勝負なのだろう。
彼女の作品を読む日を楽しみにしておこう。